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ファイナンシャル・プランナー 金子千春
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住宅購入を考える場合、「欲しい物件を決めて、それに合わせて資金計画を組む」あるいは「長期間無理なく返済できる金額を決め、その予算内で買える物件を選ぶ」の2パターンに分かれるかと思いますが、みなさんはどちらで検討されるでしょうか? 今回、「住宅ローン」について“購入物件が決まったあとに考えたほうが良い”のか、それとも“決める前に考えたほうが良い”のか、実態調査の例も見ながらご紹介しましょう。

「住宅購入計画は物件を決めた後に考える!」場合

まず、実際に住宅を購入された方は物件を選ぶ前に住宅ローンを考えているのでしょうか? 住宅金融支援機構が公表した2015年度「民間住宅ローン利用者の実態調査(第2回)」によると、“利用した住宅ローンを知るきっかけ”として影響が大きかった媒体のうち、「住宅・販売事業者」、「モデルルーム・住宅展示場」を挙げた人の割合は合計約34%占めています。また、“利用した住宅ローンの決定”に際して影響の大きかった媒体のうち、「住宅・販売事業者」、「モデルルーム・住宅展示場」を挙げた人の割合の合計は約30%と、“物件を見て初めて住宅ローンを考えた”、あるいは“物件を決めたあとで提携ローンを利用した”人の割合が比較的多い状況となっています。つまり、「物件を決め、そのうえで組めるローンを探す」というパターンが多いことが伺えますね。

資金に余裕があれば、「物件が先」でも問題ありません。ただ、物件ありきで住宅ローンを探すと、近年のように住宅ローンの金利水準が非常に低い状況では、一番金利が低いタイプに目がいきがちになります。一番金利が低いタイプの毎月返済額だけを見て、本来なら手が届かない物件も買えると勘違いして、結果、過剰なローンを組んでしまうかもしれません。もちろん、過剰なローンを組んでも、金利が変わらない、収入が増える、親に援助してもらえる、などのプラスの変化があれば別ですが、家計にマイナスの変化があると日々の生活に支障をきたす可能性もあります。
ですから、「まず家計の身の丈にあった住宅ローンの借入額、返済スタイルを考え、それに合った物件を選ぶ」ということをオススメします。

「長期間無理なく返済できる金額から物件の予算を決める」場合

その1)長期間“無理なく返済できる金額”はどう考える?

住宅ローンで失敗しないためには『長期間無理なく返せる金額』、つまり『返済可能額』から、自分が『購入可能な物件価格』を計算することが大切です。
Aさんのケースで考えてみましょう。

<Aさんの場合>

Aさん夫婦(夫35歳、妻33歳)子ども2歳
世帯年収(税込) 530万円
現在の賃料 月12万円(共益費など含む)
住宅購入のための貯蓄 月4万円(賞与分も含めた月額)
※家を買ったあとは、住宅購入のための貯蓄がなくなるので、かわりに子どもの教育費の積立に月2万円程度始めようと検討中

まず、「毎月無理なく返済できる金額」は、「現在の賃料」+「住宅購入のための貯蓄額」で計算できるので、月額16万円、年間192万円が「住宅ローンの返済可能月額」の目安といえます。ただし、住宅購入・維持には様々な費用が発生します。住宅購入後に毎年かかる「固定資産税」や「都市計画税」、将来の「リフォーム資金」など、さらにマンションの場合には「修繕積立費」・「管理費」・「駐車場代」がかかりますし、Aさんのケースでは「子どもの教育費の積立額」も考慮しておく必要があるでしょう。

仮に、「固定資産税」・「都市計画税」が年間10万円、「修繕積立費」・「管理費」・「駐車場代」(戸建ての場合には将来のリフォーム費用として)の合計として月2万円、「子どもの教育費」として月2万円積み立てるつもりであれば、192万円から58万円(10万円+24万円+24万円)を引いた残りの134万円が年間の返済可能額、つまり、「毎月無理なく返済できる金額」は約11万円となりますね。
なお、「毎月無理なく返済できる金額」を考える上では、

・二人目の子どもが欲しい
・生命保険の見直しをして支出が減った
・今まで、賃貸住宅で駐車場代がかかっていたけれど、戸建てを購入するから駐車場代が不要になる

など、住宅購入後に家計負担が増える要素、減る要素をすべて考慮して見ていく必要があります。

その2)どのくらいの借り入れが可能?

では、次に、「無理なく返済できる金額」をキープしたうえでの「借入可能金額」はどの程度か考えてみましょう。
例えば、返済期間を30年(退職時65歳までに完済)、金利1.9%※1と仮定すると、「借入可能金額」約3,010万円となります。 

※1 【フラット35】の融資率9割以下で借り入れ、取り扱い金融機関の提供する金利で最も多い金利(H28.1月:1.54%)に団信保険料見合いとして0.36%を上乗せした金利で試算。融資手数料は考慮せず。
 

(以下の式参照)
11万円÷3,646円(100万円あたりの返済額)×100万円=約3,017万円
<表A 借入金100万円あたりの毎月返済額(元利金等返済)単位(円)>img_00076

(計算の方法)
まず、金利1.9%、返済期間30年、元利金等返済で借入した場合の借入額100万円あたりの返済額は、(A)の表から3,646円とわかります。
「無理なく返せる金額」は月11万円なので、この11万円を3,646円で割ると、約30.17。
11万円 ÷ 3,646円(100万円あたりの返済額)=約30.17
100万円当たりの返済額で出しているので、最後に100万円をかけると、約3,017万円、借入金額単位で考えると約3,010万円となります。

※借入可能額は以下のような計算で求められます。
借入可能額=無理なく返済できる額÷100万円あたりの返済額×100万円
借入可能額をaとすると、
11万円:3,646円=a:100万円
a × 3,646円=11万 × 100万円
a=11万 × 100万 ÷ 3,646円

その3)購入可能な物件価格は?

さらに、住宅購入時には「印紙税」「登録免許税」「不動産取得税」などの税金や「融資手数料」などを含む「諸費用」が購入価格の1割程度かかるので、

「借入可能額」 + 「頭金」 = 「物件購入価格」 + 「諸費用」 

といえます。

例えば「頭金」で親からの援助も含めて、700万円準備可能なら借入可能額と頭金の合計は約3,710万円。この中から「諸費用」を引いた約3,370万円(万円以下切り捨てで計算)が現時点での、Aさんの「無理ない返済を考慮した購入可能な物件価格」ということになります。
ちなみに、このケースでの返済負担比率は、132万円÷530万円で24.9%、年収の20%~25%以内が理想といわれているので、将来の家計変化も見据えた安心なローン計画といえるでしょう。25%をオーバーした場合には、住宅のオプション等を見直して、借入金額を少し減額することもひとつの選択肢ですね。

その4)もし欲しい物件に届かなければ?

もし、これで欲しい物件価格に届かなければ、

・親から頭金のための援助を受けられないか? 
・教育費の援助を親から受けることで、住宅ローン返済に回す金額を増やせないか?   
・家計の見直し(特に通信費などの固定費)をして毎月返済可能額が増やせないか?
 (家計に無理がない程度であること)
・返済期間を延ばすことで、借入可能金額を増やせないか?
 (この場合には、退職時に退職金で完済しても問題ないか?などチェック要)
・もう少し金利が低いローンが活用できないか?
 (過剰なローンにならないよう注意が必要)

などを検討することで、欲しい物件に無理なく近づけていくことが可能となります。

物件を決める前に住宅ローンを考えることで、自分のライフプランをより意識できる

物件を決める前に住宅ローン返済を考える最大のメリットは、長期間無理なく返済できる金額を計算する仮定で、

・自分の家計に今後どんな変化が起こりうるのか?
・住宅ローンを返済するうえで何がネックになってくるのか?
 あるいは、どんなことに注意する必要があるか?
・金利タイプも含めたどんな返済スタイルが自分の家計に適しているのか?

が、整理できる点にあります。
これらが整理できれば、数ある住宅ローンの中から、表面的な金利やキャンペーンなどに惑わされずに自分に適した商品を選ぶことも容易になりますね。
是非、まず住宅ローンを含めた資金計画を立て、そのうえで計画に見合う物件取得を計画するという流れで考えてみてください。

 

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金子千春

千春コンサルティング事務所 代表
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級ファイナンシャル技能士、宅地建物取引主任者、住宅ローンアドバイザー

新生銀行を経て2004年より独立。ライフプランや住宅ローンセミナー、個別相談、宅建講師、企業の従業員向け投資教育、小中学校や児童館での金銭教育など、「知らないで損をする」ことのないようにという観点から、講師や執筆を中心に活動中。

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