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ファイナンシャル・プランナー 金子千春
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銀行などの民間金融機関では一般的に、住宅ローンの融資条件のひとつに最低勤続年数を定めています。ただ、住宅ローンの審査では勤続年数だけでなく、不動産の担保価値、年収、借入時年齢、返済比率、個人情報など総合的に判断されるので、「返済能力に問題がない」と認められれば、転職したばかりで勤続年数を満たしていなくても借り入れることができるケースもあります。

住宅ローンの審査は「物」と「人」の双方から見られる!

「物」の審査とは、金融機関が担保として抵当権(※)を設定する不動産物件について調べることです。万が一、借り入れた人が住宅ローンを返済できなくなった際、抵当権がついている不動産物件を売った代金で融資したお金の回収ができるかどうかを審査します。「人」の審査では、借り入れをする人に対する審査で、年収や他の借入状況、勤務先、年齢などを調べることで、最後まで返済を継続できるかを審査します。住宅ローンの審査では、それらの要件について総合的に見て、借り入れの可否が判断されるのです。

ちなみに、国土交通省住宅局の「平成26年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」によると、民間金融機関が住宅ローン審査において考慮する項目は、「完済時年齢(99.3%)」、「借入時年齢(97.6%)」、「返済負担率(96.6%)」、「担保評価(96.3%)」、「健康状態(96.3%)」、「勤続年数(95.9%)」、「年収(94.8%)」が上位項目となっています。

※融資したお金が確実に回収できるように、不動産物件につける権利のこと。抵当権を設定することで、万が一、お金を返してもらえなくなった場合、その不動産物件を売却し、その代金から優先的にお金を返してもらえるようになる。

転職したばかりで勤続年数が短い場合でも、住宅ローンが組めるのはどんなとき?

住宅ローンの審査要件のひとつに、勤続年数が2~3年以上と謳っているケースがあります。ただし、住宅ローンの審査では、「融資した資金をきちんと長期間にわたり、返済することができるか?」が重要なので、その数字を満たさないから審査基準を満たさないということではなく、あくまでも総合的に判断をするためのひとつの要素なのです。

したがって、転職直後であっても、
・同じ業界で年収アップ
・転職先の企業の財務内容に問題がない
・職種が同じで、転職後に収入がアップしているなどキャリアに一貫性がある
・会社からの要請でグループ会社への転職
・士業などの資格や専門技術を生かした転職

などであれば、勤続年数1年未満など、たとえ条件を満たしていなくても、勤務形態や勤続年数については柔軟に対応する金融機関が増えています。
逆に、異なる業種に短い期間で転職を繰り返しているようなケースでは、「返済能力に安定性がない」とみなされて、融資を受けられないことが一般的です。

また、キャリアアップのための転職であり、収入要件や年齢要件など他の要件を満たしていたとしても、審査が通らない場合もあります。例えば、キャッシングや自動車ローン、教育ローンなど、その他のローンの借り入れが多いケースでは、ある程度整理してから住宅ローンの借り入れの申し込みをしたいものです。また、キャッシングやクレジットカードの枠もその他のローンとみなされることもありますので、不要なカードは念のため、解約をしておきましょう。

なお、最近では明確に勤続年数を要件にしていないところもあります。勤続年数が短いからと言ってあきらめるのではなく、まずは金融機関に相談をしてみることをおすすめします。

【フラット35】では、勤続年数の条件が決められていない

【フラット35】では収入要件はありますが、「勤続何年以上」という要件はありません。ただし、住宅ローンの借り入れには、前年度(1月から12月まで)の収入を証明する書類が必要となるため、転職後1年を経過していないケースでは、収入要件を満たすことができないこともあります。そのような場合、給与収入を受けている方は勤務先に転職後1ヶ月以上分の「転職後の収入を証明する書類」を作成してもらうことで、転職後の収入を考慮してもらうことができるようになっています。また、個人事業主の方は、事業開始後に確定申告をしている必要があります。

勤続年数は審査で重要視される事項ですし、審査で制約がかかることもありますが、住宅ローンの審査は総合的な判断によるものなので、勤続年数が短いことだけを理由として融資審査ではねられるケースは少ないでしょう。また、例えば同業種間の転職において、さらにステップアップすることが目的で、それに伴って給与が確実に上がる場合には、転職後の家計上の心配は少ないかもしれませんが、転職後の家計は不安定になり、落ち着くまでに時間がかかるケースもあります。

転職を考えた際には、いつ住宅を買うべきなのか、転職後の住宅購入と住宅ローンの借り入れに不安定な要素がないのか、将来のライフプランも考慮したうえで、長期的な視野でチェックをしておくことが大切ですね。

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金子千春

千春コンサルティング事務所 代表
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級ファイナンシャル技能士、宅地建物取引主任者、住宅ローンアドバイザー

新生銀行を経て2004年より独立。ライフプランや住宅ローンセミナー、個別相談、宅建講師、企業の従業員向け投資教育、小中学校や児童館での金銭教育など、「知らないで損をする」ことのないようにという観点から、講師や執筆を中心に活動中。

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