ファイナンシャル・プランナー 金子千春
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「繰り上げ返済」か「借り換え」か、住宅ローンの返済負担を少しでも有利に軽減したい人にとっては常に悩ましい問題です。借り換えには諸費用がかかるため、まずは手軽な繰り上げ返済を選ぶ人も多いようですが、最近では諸費用が非常に安い金融機関も多く、僅かな金利差でも借り換えメリットが出る可能性もあります。将来の金利動向や家族のライフプランの変化も含めて、どちらが効果的か総合的に判断しましょう。

まずは「繰り上げ返済」と「借り換え」の効果をしっかり把握する!
コストの見極めが大事。

「繰り上げ返済」メリットと「借り換え」メリットは、一般的に以下のように考えられます。

繰り上げ返済効果
「繰り上げ返済により軽減される利息額-繰り上げ返済にかかる諸費用」
借り換え効果
「借り換えにより軽減できる今後の総返済額-借り換えにかかる諸費用」

繰り上げ返済にかかる諸費用は、金融機関や選択している金利タイプ、繰り上げ返済金額によっても異なりますが、一般的に1回につき3,000円~50,000円(税抜)程度の手数料がかかります。最近では、インターネットを使用すれば無料という金融機関も多く、ネット銀行などではいつでも無料で繰り上げ返済が可能なケースも多くみられます。
一方で、借り換えにかかる主な諸費用は次の通りです。

・事務手数料(融資金額×○%や32,400円など定額)
・収入印紙代
・保証料(金融機関によってはかからないところもあり)
・登録免許税(借り換えの対象となる住宅ローンの抵当権抹消・借り換え後の住宅ローンの設定費用)
・団体信用生命保険特約料(民間ローンでは金利込の場合が多い)
・繰り上げ返済手数料(借り換えの対象となる住宅ローンを完済するための費用)

また、借り換え時には借り換えの対象となる住宅ローンについての未払い利息分である「経過利息」も支払う必要がありますし、諸費用がどの程度かかるのかは金融機関によっても異なります。諸費用が多くかかったために、結果的に繰り上げ返済の方が有利だった、ということにならないよう、目先の金利や返済額だけでなく諸費用も含めて総合的にメリットを図りましょう。
なお、借り換えの対象となる住宅ローンで保証料を全期間分一括で支払っている場合、借り換え時に残期間分の保証料の一部が戻ってきます。諸費用があまりかからない金融機関を選択すれば、戻り保証料で諸費用のほとんどをまかなえることもあるので、要チェックですね。

次に「繰り上げ返済」と同様の効果を得られる「借り換え」の損益分岐点の金利を把握

では、具体的に例を挙げて繰り上げ返済と借り換えのどちらが有利かを検証してみましょう。

<当初の住宅ローンの状況>

当初借入金額 3,000万円
返済期間 30年
金利2%(全期間固定金利型)
毎月の返済額 110,885円(ボーナス返済なし)
元利均等返済

10年間返済が終了した時点で繰り上げ返済もしくは借り換えを考えており、繰り上げ返済資金は200万円を用意したとします。なお、繰り上げ返済はネットで実施し、手数料は無料とします。

<10年後の住宅ローンの状況>

ローン残高 約2,192万円
残りの返済期間 20年
残りの総返済額 約2,661万円

※金利や毎月の返済額は当初から変更なし

<繰り上げ返済をする場合>   ※試算は概算

繰り上げ返済パターン 期間短縮型 返済額軽減型
繰り上げ返済額 約196万円 約200万円
繰り上げ返済後の毎月の返済額 110,885円 100,768円
返済短縮期間 2年2ヶ月
繰り上げ返済後の総返済額 約2,373万円 約2,418万円
繰り上げ返済効果 約92万円 約43万円

では、借り換えによって繰り上げ返済と同様の効果を得るためには、諸費用も含めてどの程度の金利差が必要なのでしょうか?繰り上げ返済資金の200万円を使い、この中から借り換えの諸費用を支払い、残額で元本を減額して借り換えた場合において、借り換え諸費用が多いケースと少ないケースとで比較してみます。

<借り換えをする場合>全期間固定金利型への借り換え

■その1:借り換えにかかる諸費用が少ないケース
諸費用:登記費用や事務手数料など最低限の23万円のみ ※試算は概算

  期間短縮型と比較 返済額軽減型と比較
借り換え額 2,015万円(諸費用別)
団体信用生命保険 金利込
返済期間 18年 20年
損益分岐点の金利 1.86% 1.87%
毎月の返済額 109,844円 100,699円
借り換え後の総返済額 約2,373万円 約2,417万円

借り換えにかかる諸費用が少ないケースでは、期間短縮型でも返済額軽減型でも、0.15%程度以上低い金利のローンに借り換えられるのであれば、借り換えの方が効果的といえます。さらに、繰り上げ返済で短縮可能な期間と同程度返済期間を短くして18年で組んだ場合でも、現在の住宅ローンよりも毎月の返済額が軽減できていることがわかります。
では、借り換えコストが多いケースではどうでしょうか?

■その2:借り換えにかかる諸費用が多いケース
諸費用:事務手数料などがかかり53万円  ※試算は概算

  期間短縮型と比較 返済額軽減型と比較
借り換え額 2,045万円(諸費用別)
団体信用生命保険 金利込
返済期間 18年 20年
損益分岐点の金利 1.69% 1.72%
毎月の返済額 109,871円 100,763円
借り換え後の総返済額 約2,373万円 約2,418万円

借り換えにかかる諸費用が多い場合でも、金利差が0.31%以上あるのであれば、単純な繰り上げ返済よりも借り換えのケースの方が負担軽減効果は高くなっています。もちろん、ローン残高や残期間、現在の住宅ローンの金利などによっても結果は異なりますが、このように僅かな金利差でも、単純な繰り上げ返済よりも借り換えの効果が発揮されるケースもあります。
金融機関が提供しているシミュレーションツールを活用すれば試算することができるので、自分にとってはどんなケースでどちらが有利か、様々な条件を設定してシミュレーションしてみるといいでしょう。

なお、今回は全期間固定金利型へ借り換えをする前提で試算をしています。変動金利(半年型)や当初固定金利型への借り換えと比較する際には、金利が上昇した場合にはどうなるのかを考慮することも忘れずに!

住宅ローンの見直しの目的ははっきりと。見直しをすることで生じるリスクも見極めることも大切!

毎月の返済額を抑えたい、総返済額を抑えたいなど、何を目的として見直しを考えるかによっても、繰り上げ返済が有利か借り換えが有利かは異なります。また、見直しをすることで生じるリスクもあるので、自分にとってのメリットとデメリットを見極めておくことが大切です。
例えば、教育費がかかる時期の家計負担を抑えたいのであれば、低金利の変動金利(半年型)に借り換えることが目先の家計には効果的ですが、逆に、金利上昇に伴う「将来の家計負担増」というリスクが生じます。この場合、将来の家計負担増の方が自分にとってダメージが大きいのであれば、現在のような低金利のうちに、金利上昇リスクのない全期間固定金利型に借り換えることが効果的といえます。あるいは、教育費のかかる時期の返済額の安定性を重視するのであれば、手元資金の一部を繰り上げ返済に使い、ローン残高を減らした上で、一定期間金利を固定する当初固定金利型に変更する、という考え方もあります。

将来の金利動向やライフプランの変化も考慮したうえで、メリットだけでなくデメリットもイメージして、自分にとって何か一番効果的か判断することも必要といえますね。

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金子千春

千春コンサルティング事務所 代表
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級ファイナンシャル技能士、宅地建物取引主任者、住宅ローンアドバイザー

新生銀行を経て2004年より独立。ライフプランや住宅ローンセミナー、個別相談、宅建講師、企業の従業員向け投資教育、小中学校や児童館での金銭教育など、「知らないで損をする」ことのないようにという観点から、講師や執筆を中心に活動中。

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