ファイナンシャル・プランナー 中村宏
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住宅ローン選びは、その時の金利情勢や優遇制度などを判断材料にして金利タイプ等の条件を決めがちです。しかし、より重要視すべきことは、自分や家族が今後どんな生活を営んでいくかということです。住宅ローンの返済を着実に行うには、住宅ローン選びとライフプランを深く関連付ける必要があります。

今の金利情勢なら、全期間固定金利型がベター!

住宅ローンの金利は、日本銀行の金融緩和によって歴史的な低水準を示しています。全期間固定金利型の代表格である【フラット35】の2015年2月の最頻金利(最もたくさんの金融機関が提示した金利)は、1.37%(返済期間21年以上、融資比率9割以下の場合)と、史上最低金利を更新しました。3月においても1.47%と、2月より0.1%上昇したものの、依然として空前の低水準だといえます。変動金利(半年型)においても、0.5%台を提示している金融機関もあります。

このような低水準の金利が続く中で、住宅ローンの金利タイプを選ぶには、全期間固定金利型のような固定金利期間が長いものが適しています。なぜなら、金利は今後さらに下がる余地があまりない一方で、中長期的にみると上がる余地は十分にあるからです。日本銀行が金融緩和を縮小すれば、一般的に金利は上昇します。物価が上がっても、景気が上向いても上昇します。日本の財政赤字が今以上に膨張し、国際的な信認が低下した場合も、金利は上昇する恐れがあります。

中長期的に市場金利が上昇する可能性が高い場合、変動金利(半年型)や当初固定金利型の住宅ローンでは、返済額が増えて家計を圧迫する恐れがあります。さらに、今の全期間固定金利型での返済額を、将来の変動金利(半年型)や当初固定金利型の返済額が上回ることも考えられます。

ただ、このような金利情勢という“外部環境”だけを判断材料にした金利タイプ選びは、十分に検討を加えた結果の決定だと言うことはできません。自分にピッタリの住宅ローンを選ぶのであれば、外部環境の次に、自分や家族のこと、つまり”内部環境”にもしっかり目を向ける必要があります。

ライフプランによって金利タイプを決める!

たとえば、45歳の会社員のAさんが住宅ローンを組む場合を考えてみましょう。
返済期間は、安定的に高い収入のある60歳の定年までに設定したいところですが、15年返済にすると毎月の返済負担と子供の教育費が重なってやりくりが大変です。そのため、ローンを組む時点では25年返済のプランにして毎月返済額を抑えることを考えました。予定では返済終了年齢は70歳になります。
しかしAさんは、定年後に住宅ローンの返済をするつもりはありません。収入が減る中でそれができるとも思っていません。定年までになんとか家計を工夫してゆとりを作り、できる限り繰り上げ返済を行い、それでも60歳までに返済ができないなら、退職金を使って残債を一括返済しようと考えています。

そんなAさんに最適な金利タイプは、全期固定金利型なのでしょうか。
Aさんの住宅ローンは、借りるときは25年返済で組むのですが、実際の返済は定年までの15年で終わらせる予定です。その後、いくら金利が上がって返済額が上昇しようとも、すでに完済しているAさんにはまったく関係ありません。
そうだとすれば、プラン上の返済期間である25年間ずっと金利が変わらない全期間固定金利型よりも、当初15年間だけ固定金利の当初固定金利型の方が、一般的には低い金利が適用され、Aさんにとっては有利なはずです。

さらに、下の子供が大学を卒業して自立するのが10年後(Aさんの年齢は55歳)だったらどうでしょう。55歳から60歳までの5年間は重い教育費の負担がなくなり、相当なスピードで繰り上げ返済ができるはずです。
金利が上昇しても、繰り上げ返済によって元金を減らすことができれば恐くありません。元金が3,000万円で金利2%の場合、1年間に支払う利息額は単純計算では60万円ですが、2,000万円の繰り上げ返済をして元金を1,000万円にすることができれば、仮に金利が6%に上昇しても1年間に支払う利息額は変化しません。

このように、金利タイプを決めるときは、世の中の金利情勢だけで判断するのではなく、自分と家族のライフプランを関連づけることで、有利な選択をすることができます。住宅ローンを返済している最中に、家計にゆとりが生まれ、繰り上げ返済を積極的にできる状況を作れれば、その時期によっては当初固定金利型の固定金利期間が短いものにしても大丈夫ですし、場合によっては変動金利(半年型)でもいいかもしれません。
家計にゆとりが生まれる要素とは、元々夫婦ともにずっと正社員で働く予定であるとか、今は片働きだがある時期から共働きになるつもりがある、親からまとまった資金援助がある、相続の見込みがあるといったことなどがあるでしょう。夫が働く期間や妻が働く期間、子供が自立する年齢なども重ね合わせて、どの時期にどの程度家計にゆとりが生まれ、繰り上げ返済原資を作ることができるかを考えるのです。
ただし、将来の変動要素が大きく、ライフプランが予定通りにいかない可能性が高いと思う場合には、金利の上昇が家計にマイナスの影響を与えない「全期固定金利型」が適しているといえます。

このように、住宅ローンの金利タイプを決めることひとつをとっても、家族や自分のライフプランを具体的に考えているかどうかによって選び方が変わってきます。金利動向に一喜一憂しながら決めるのではなく、「最も有利に、効率的にライフプランを実現できる方法は何か?」を基準に決める方が、納得感のある決定ができるのではないでしょうか。

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中村宏

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、住宅ローンアドバイザー

個人相談、セミナー講師、新聞や雑誌・Webの記事執筆や取材協力が主な業務。
暮らしのお金に関するお役立ち情報として、無料のメールマガジン「生活マネー ミニ講座」(平日:毎日)を配信中。

FPオフィス ワーク・ワークス代表

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