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ファイナンシャル・プランナー 髙木惠美子
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2016年2月にマイナス金利政策が導入され、全期間固定金利型や当初固定金利型の10年固定の金利の低下はニュースにもなりましたが、変動金利(半年型)に変化はあったのでしょうか?  過去・現在の変動金利(半年型)の推移と今後の動きを見極めるポイントを押さえていきます。

過去、変動金利(半年型)が高かったことはあるの?

まずは過去の変動金利(半年型)の金利推移を見てみましょう。最近の約20年間は、ほとんど上昇することなく低金利のままです。これは、「失われた20年」ともいわれるデフレ経済に伴うもので、「変動金利(半年型)は上がらない」と感じている人も多いでしょう。

しかし、この金利の低さが当たり前だと思ってしまうのは危険です。もう少し前までさかのぼって、金利の推移を確認してみましょう。

<図1>住宅ローンの金利推移

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出典:「民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)」住宅金融支援機構ホームページより。
ふきだし部分を筆者にて加筆

図1のオレンジの線が過去の変動金利(半年型)の動きです。8.5%を付けた1990年~1991年(平成2~3年)は、バブルの絶頂期。日経平均株価が38,915円(終値)の最高値を付けた頃です。郵便局(現在のゆうちょ銀行)の定額貯金が6%など預金の金利も高く、不動産の価格も右肩上がりだった時代です。好景気に沸き、給料は上昇し消費も活発でした。

一方、株や不動産のバブルが崩壊すると、歩調を合わせるように低金利時代に突入。2008年(平成20年)のリーマンショック以降も、株価の下落や賃金カットなどから、景気は冷え込み続けています。不況を背景に、変動金利(半年型)は現在も低いままです。

このように好景気であれば金利は高くなり、不景気であれば金利は低くなります。つまり好景気の時代がくれば、変動金利(半年型)の金利が上昇することも十分ありえるのです。

<図2>金利はどんな要因で、上がる? 下がる?img_00087_2

 

 今後の住宅ローン金利、どう予測する?

・変動金利の今後は?

最近の変動金利(半年型)の金利は、マイナス金利政策の導入後も各金融機関とも店頭金利(基準金利)に動きはありません。変動金利(半年型)の店頭金利は、「無担保コールレート翌日物」の金利を基準に、各金融機関が独自に決めています。「無担保コールレート翌日物」とは、金融機関が優良企業向けに短期(1年)で貸し出す最優遇貸出金利のことで、日本銀行(以下、日銀)の政策金利の影響を受けて動きます。その政策金利が見直されていないので、変動金利(半年型)の店頭金利に変化がないというわけです。

今後、どのようなタイミングで政策金利が見直されるのでしょうか。日銀は物価安定の目標として、「消費者物価の前年比上昇率2%」を掲げています。これが達成されるまではゼロ金利政策が続くものと考えられますが、目標が達成されれば、政策金利も上がり、変動金利(半年型)は上昇に転じてくるでしょう。当面の間、急激に金利が上がることはないと考えられますが、金融政策を審議する「金融政策決定会合」の結果などをチェックし、世の中の動きにアンテナを立てておきましょう。

なお、住宅ローンは、店頭金利(基準金利)から審査等によって引き下げられたものが適用金利となります。店頭金利(基準金利)が変わらなくても、引き下げ幅が大きくなれば適用金利は低くなります。見た目の適用金利が低くなっていた場合には、店頭金利が下がったのか、引き下げ幅が大きくなったのかを見極めることも大切です。

<図3>「政策金利」なにをチェックすればよい?「経済や物価の見通し」は日銀の金融政策決定会合後、発表されます。

 

・今後の固定金利は?

固定期間が長めの住宅ローン金利は、「長期金利」に連動して動きます。代表的な指標は「新発10年国債利回り」で、現在は-0.1%前後で推移しています(2016年5月17日現在)。
今後、さらに踏み込んだマイナス金利政策が取られるようなことがあれば、全期間固定金利型や当初固定金利型の10年固定の金利は、さらに下がる可能性も考えられます。
毎日、新聞などに載る長期金利の動きをウォッチしていましょう。

 

「いまどき」にマッチした金利タイプはなに?

変動金利(半年型)の金利は低いまま動かず、固定期間が長いものの金利が下がっている現在、どの金利タイプがよいのでしょうか?

<新規借り入れ>

マイナス金利政策により金利が低下している今は、全期間固定金利型を選ぶにはとてもよいタイミングです。5月の【フラット35】(融資比率9割以下、返済期間21年以上)の金利は1.08%、【フラット35】Sであれば0.78%(当初5年間もしくは10年間)と、変動金利(半年型)と錯覚しそうな水準です。

返済額が一定なので、将来的に物価や給料が上がれば、家計に占める返済額の割合は小さくなります。返済額にゆとりができる期待も望めそうです。

<借り換え>

借り換えの目的は、返済額を減らすことだけではありません。変動金利(半年型)など将来の返済額が変動するものから、今後の返済額を固定するために全期間固定金利型などに借り換えするのも一手です。例えば、図4の例では、総返済額が約45万円少なくなりながらも、今後の返済額の上昇を心配する必要がなくなります。

<図4>変動金利から【フラット35】に借り換えると返済額はどうなる?img_00087_4

 

変動金利で借りるとき、注意することは?

当面の毎月返済額を少なくしたい人は、変動金利(半年型)や当初固定金利型を選ぶと効果的です。ただし、借入金額が多い、返済期間が長い場合は、金利上昇の影響を受けやすくなります。念入りにシミュレーションをし、いざというときには繰上返済ができるような資金を確保しておくなど、金利上昇の対策をしておきましょう。

また、金利が低いゆえ、現在の毎月返済額には余裕があります。借入額が多くなってしまったり、家計支出が多くなってしまったりしがちです。財布も気持ちも引き締めて資金計画を立てましょう。

変動金利(半年型)は、将来的には上昇してくると考えておきましょう。今すべき対策や、よりベストな金利タイプを考えるには、自分なりの予測を持つことが大事です。

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髙木惠美子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、上級モーゲージプランナー(CMP)

アドバイスはもちろん、実行までをサポートする実務家FP。
セミナー・執筆では、しがらみのない自由な視点で情報発信。「バランス感とこころの豊かさ」にこだわった家計づくりを得意とし、常にお客さまサイドのサポーターとして活躍中。

FP事務所ラパン

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