ファイナンシャル・プランナー 大林香世
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「うつ病だと、住宅ローンは組めない」と言われることがありますが、必ずしも住宅ローンが利用できないわけではありません。住宅ローン利用の際にうつ病が問題になるのはどんな場合か、どんな形でなら住宅ローンが利用できるのか、確認してみましょう。

「うつ病」の原因や種類はさまざま

そもそも、うつ病とは、「憂うつである」「気分が落ち込んでいる」などと表現されるような症状がある程度以上重症である状態を指します。うつ病は原因や症状によってさまざまに分類され、難治性で治療に長くかかる場合もありますが、通院や投薬等で回復し、通院も不要になる場合もあります。再発率の高い病気であるとされ、再発を繰り返すごとに再発率は高くなるそうです。
「うつ病」が住宅ローン利用の際に問題になるのは、住宅ローンを利用する際にはほとんどの場合加入が必須となる「団体信用生命保険」に加入できるかどうかに関わってくるからです。団体信用生命保険は、ローン利用者が死亡・高度障害になった場合に、その時点のローン残高が保険金で完済される保険です。したがって、死亡・高度障害になる可能性の高い(保険金が支払われる可能性が高い)病気などにかかっていると、加入が断られる場合が多くなります。
うつ病のために団体信用生命保険への加入が断られることが多いのは、うつ病が自殺の重要な要因と考えられ、再発率も高い病気とされているからだと考えられます。警察庁の調査によれば、平成26年中の自殺者のうち、「うつ病」の悩み・影響があったとされる方の割合は約21%(25,533人中5,439人)と、高い割合を占めています。

(参考)警察庁 平成26年度中における自殺の状況 付録1
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/H26/H26_jisatunojoukyou_02-1.pdf

一定期間内の治療歴等の告知義務のある団体信用生命保険

しかし、うつ病にかかったことがあると、必ずしも団体信用生命保険に加入できない、というわけでありません。そもそも、うつ病に限らず、団体信用生命保険の告知書で治療歴等が問われるのは、「過去3カ月以内」や「過去3年以内」のこと。告知は、保険会社が告知を求めた事項に応答する形で行うことになっているので、たとえば5年前に、医師が通院や治療等は今後不要と判断し、実際にそれ以後通院・治療等を行っていないのであれば、団体信用生命保険の告知書に記載する義務はありません。
 告知書で質問された期間内に治療歴などがあれば、ありのままに告知書に記載する義務があります。告知事項は商品や保険会社によっても異なりますが、団体信用生命保険の病歴や治療歴に関する告知は、以下のような質問に対して、「はい・いいえ」や「あり・なし」と行った選択肢で答える形式になっています。

1.最近3カ月以内に医師の治療(指示・投薬を含みます)を受けたことがありますか。
2.過去3年以内に下記の病気で(病名が列挙される)で、手術を受けたことまたは2週間以上にわたり医師の治療・投薬を受けたことがありますか。

2.の「病気」に列記される病名には、狭心症や心筋梗塞といった身体的な病気とともに「精神病・うつ病・神経症・てんかん・自律神経失調症・アルコール依存症」等の病名も挙げられているので、ありのままに回答しなくてはなりません。「はい」や「あり」と答えた病気については、より詳しく病名や治療内容・治療期間(完治の場合は、終診年月も)、症状の経過などを記入することが求められます。告知された病名や治療内容・期間等が保険会社によって審査され、加入が判断されることになります。

なお、うつ病に限ったことではありませんが、該当期間に病歴や治療歴があるのに故意に記入しなかったり事実と異なることを記入したりすると「告知義務違反」となり、生命保険会社はその契約を解除し、保険金を支払わない場合があります。死亡などの万一のことが起こり、保険契約が解除されて住宅ローンが残れば、返済に困るのは残されたご家族です。告知書に書かれた質問事項には、きちんと答えましょう。

(参考)病歴があったのに告知するのを忘れていたら?
http://www.jili.or.jp/knows_learns/q_a/life_insurance/life_insurance_q7.html

引き受け基準が緩和された「ワイド団信」

うつ病の治療歴等が原因で団体信用生命保険に加入できず、住宅ローンが利用できなかった場合には、「ワイド団信」の利用を検討されてもよいかもしれません。「ワイド団信」は、従来の団体信用生命保険よりも引き受け基準が緩和された団体信用生命保険で、病気が理由で団体信用生命保険に加入できない方向けに開発された商品です。ただし、通常の団体信用生命保険を利用する場合に比べ、0.3%程度借入利率が高くなるので、毎月返済額や総返済額でどれくらい違いがあるかなども試算した上で、利用を検討する必要があります。
もちろん、年齢・性別・症状・治療歴等の告知内容による保険会社の診査によって加入できない場合もありますが、通常の団体信用生命保険よりは加入できる可能性は高いでしょう。イオン銀行の「ワイド団信」のHP (https://www.aeonbank.co.jp/housing_loan/wide_danshin/)では、引き受け実績のあるおもな例として、うつ病等の精神疾患も挙げられています。

団信に加入せずに、住宅ローンを利用する方法も

団体信用生命保険に加入せずに、住宅ローンを利用する、という選択肢もあります。【フラット35】のような、団体信用生命保険の利用が任意の住宅ローンを利用する方法です。
ただし、団体信用生命保険を利用しないのであれば、別途、死亡や高度障害といった「万一」への対策が必要です。借入金額以上の死亡保険金額の生命保険等に既に加入されていたり、ご家族がローンの返済を引き継いで続けることが可能であったりすれば、検討される価値はあるでしょう。

うつ病は再発することもあり、症状が重くなると休職、退職等で収入が少なくなったり、得られなくなったりする可能性もあります。住宅ローンの借り入れができていた場合でも、返済が難しくなる場合があるかもしれません。これから住宅ローンの利用を考えられる際には、「借りられるか」よりも「返済を続けていけるか」「万一の場合にも、遺族を困らせることはないか」を優先して考えて、住宅購入やローンの利用を検討してみてください。

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大林香世

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP協会CFP(R)認定者

ライフプランから見て無理のない住宅購入計画やローンプラン、保険や相続、資産運用などの相談支援業務を行っている。各種セミナー講師、新聞・Webサイト等へのコラム執筆でも活動中。

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