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ファイナンシャル・プランナー 有田美津子

遠方に暮らす親が介護状態になってしまいました。私は普段仕事をしていますので、在宅か介護施設を検討していますが、どのくらい費用がかかるのでしょうか。在宅と介護施設で金額やケアに違いはあるのでしょうか。(50代後半/男性/管理職)

★ファイナンシャル・プランナー 有田美津子さんからのアドバイス

若いころは頼りにしていた親もいつの間にか年を取り、この前会ったときは元気だったのにあっという間に介護状態に、というのはよくある話です。元気なうちに親子で介護の準備について話し合っておくことが理想ですが、現実には介護は突然やってきます。

介護の担い手が仕事を辞めずに続けていくために、在宅介護と介護施設でかかるお金とケアについてしっかりと理解しておきましょう。

“要介護3”を目安に施設入居を検討しましょう

公的介護保険のサービスを利用した場合、利用者の自己負担額は介護サービスにかかった費用の1割です。ただし、一定以上の所得がある方は2割負担となります。下の表は在宅介護と介護保険上の特定施設に入居した場合の自己負担額(1割負担の場合)を表しています。

<要介護度(※)による自己負担額の目安(1割負担)>

  在宅介護 介護保険上の特定施設
要支援1 5,003円 5,370円
要支援2 10,473円 9,240円
要介護1 16,692円 15,990円
要介護2 19,616円 17,910円
要介護3 26,931円 19,980円
要介護4 30,806円 21,900円
要介護5 36,065円 23,940円

※介護が必要な人の状態区分

<補足>
・年金収入のみの場合、単身で年収280万円、夫婦で359万円を目安に自己負担額は2割。
・低所得者や1か月の利用料が高額になった場合は負担の軽減措置あり。
・介護と医療を合算した負担の軽減措置もある。(高額介護医療合算療養費)

介護保険の自己負担額は要支援2以上では介護保険上の特定施設(特養等)への入居の方が安くなり、要介護5では在宅介護との差が1万円以上となっています。

また、身体の状態も要介護2までは身の回りの世話や食事、排せつに何らかの介助があればなんとか自立して生活ができる程度です。しかし、要介護3以上となると自分で歩行や排せつなどができなくなり、一人で生活するには命の危険も伴うことになりかねません。
こうしたことから一人暮らしや高齢夫婦だけで暮らしている場合は、要介護3以上になったら施設での介護を考えなくてはなりません。

とはいえ、介護保険上の特別施設の中でも、比較的安価な費用で入居できる特別養護老人ホームは、要介護3以上の場合でないと申し込むことができず(※)、待機者も多いため入居までには時間がかかります。また、要介護2までであっても一人、または高齢夫婦だけで暮らしていく負担は大変です。
※平成27年4月に法改正あり。特例によって要介護3以下でも入居できる場合もある。
介護度が重くなった場合の在宅介護のサービスと費用について整理しておきましょう。

在宅で介護度が重くなったら定期巡回・随時対応サービスを利用

介護状態になってもできるだけ自立した生活を自宅で送るために、定期的な巡回と困ったときに随時通報すると対応してくれる介護サービスが2012年4月より受けられるようになりました。要介護1から5の方は訪問介護だけでなく訪問看護とも連携して24時間365日利用できるサービスです。(要支援1、要支援2の方は利用できない。)

<定期巡回・随時対応サービスによる訪問介護・看護の1か月あたりの費用(1割負担)右側は訪問看護サービスを受けない場合>

  訪問介護+訪問看護を受ける場合 訪問介護のみ受ける場合
要介護1 8,255円 5,658円
要介護2 12,897円 10,100円
要介護3 19,686円 16,769円
要介護4 24,268円 21,212円
要介護5 29,399円 25,654円

<脳梗塞で退院後の定期巡回・随時対応サービスプラン例>

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ブルーの線は毎日定期的に行う身体介助です。その他週1回訪問入浴と訪問リハビリ、月に2回訪問看護、週3回オペレーターが通報を受けた時、利用者の状況に応じて随時対応サービスを受けることができます。
定期巡回・随時対応サービスの、訪問介護・看護は、一般的な訪問介護や訪問看護のような2時間、3時間とまとまった時間ではなく、必要な介護だけを1日に何回も受けられるサービスです(20分未満の単位でもOK)。たしかに同居家族の負担を減らすことはできますが、一人で暮らし続けるにはこれだけでは足りません。

しかし、介護保険の上限以上のサービスを利用すると、超えた分について10割負担となり、介護費用が高額になってしまいます。

介護保険上の特定施設のケアとお金

そのため介護度が重くなってくるとやはり施設での介護を検討する必要が出てきます。しかし、介護保険上の特定施設である特別養護老人ホームへの入居は、申し込みの条件が要介護3以上となっても待機者は多く、必ずしもすぐに入れるわけではありません。サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームも念頭に高齢者の施設を探すことになります。

それぞれの施設の特徴と費用はどのくらいかかるのでしょう。

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特別養護老人ホームは、住民税がかからない世帯や年金収入が少ない世帯なら、食費や家賃を軽減する制度があり、要介護5でも月5万円から8万円程度で暮らすことができました。そのため住民税がかからない遺族年金で暮らしている一人暮らしの高齢者は安い費用で入居することができました。しかし、2016年8月からは遺族年金も収入とみなすため一定額以上の年金をもらっていると特養でも10万円から15万円程度の費用がかかるようになります。

民間の有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅は、すぐに入居はできても年金では毎月の費用がまかなえない人がほとんどです。預貯金の取りくずしや自宅の活用で資金をねん出し、何年間の入居なら費用がまかなえるかを計算してから施設を選ぶ必要があります。

突然の介護では施設を選ぶゆとりもありません。厚生労働省の調査によれば1か月あたりの介護の平均額は約5万7000円※という結果が出ています。いざという時の介護のために、せめて毎月5万円から6万円程度は介護に充てられる費用を確保しておきたいものです。

※出典:厚生労働省 平成21年度厚生労働省委託調査 仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査結果について

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有田美津子

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、相続診断士
銀行での住宅ローン相談、住宅販売、損保会社を経て独立。現在は人生と仕事の実務経験を活かし、子育て世代の住宅購入とシニア世代の住替え相談を行う。ライフプランに沿った資金計画から物件の引き渡しまで一貫したサポートが好評。共著・監修に「トクする住宅ローンはこう借りる」(自由国民社)。

50代からの住まい専門FP

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